パキスタン訪問記
今年(2023)の10月29日から1週間、かねてから是非に、と思っていたパキスタンのMALCに訪れることができました。
日頃はマリアの御心会の信濃町共同体で朝のミサにあずかるなど、信濃町のシスター方に大変お世話になっています。
私は小児科開業医です。東京の練馬区というところで父から受け継いだ小さな診療所で診察し、また保育園の園医、学校医、産業医、さらに児童養護施設、少年院などでも微力ながら地域医療の活動をしています。夏には槍ヶ岳での山岳診療所、年に数回は八丈島での離島医療もしています。
私は医療者としてハンセン氏病については関心が高く日本でも国立ハンセン氏病資料館、長島愛生園に頻回に訪れています。ハンセン氏病は聖書の時代には穢れの病とされていましたが、差別と偏見に苦しむ人々が主のあわれみによって癒された箇所にはいつも感動します。治療方法がなく社会から隔絶され、絶望の中にも光を見出し、昇華されていく患者さんの魂にも学ぶところがたくさんあります。そして医療の力が及ばなかったために病に苦しむ人々がいたということに医学の進むべき方向をあらためて考える機会としています。
このたびパキスタンのMALCを訪問して感じ取ったことは、Dr.Ruthの覚悟です。
この地でハンセン氏病に罹患した患者さんのために全人生をかけ、その苦しみに寄り添った利他的な彼女の精神性は、今も医療に反映されていると思いました。
そして、この病院に根付いている他の病院とはなにか違う慈愛に満ちた雰囲気は主によってもたらされた癒しと平和のなせるものだ直感しました。
医学の発展によってハンセン氏病は撲滅されつつありますが、このスピリットをそのまま生かし社会の片隅におかれた人々への、今必要とする人に必要なことを行っていくという覚悟は受け継がれ、母子保健などのあらたな活動につながっているのだと思います。
今回4日間何か所かのセンターでの診療を見学させていただきました。毎日驚くほどたくさんの母子が医療を求めて集まってきていました。Dr.IzabelとDr.Kinnzaは若くかわいくて、明るくエネルギッシュで、なにより次々と的確に助言をしており、Sr.マーガレットをはじめ診療チームのメンバーは、様々なお母さんたちに上手に心を配りながら診療のサポートをしていました。その素晴らしい働きぶりには感銘を受け、彼女たちが日本にいたら一緒に働きたいと思うほどでした。
私が日本で診たことのない病気のこどもたちもたくさんいました。
予防接種率を高めること、栄養問題、母子保健にかかわる教育など、この分野ではまだまだ整えるべきことがたくさんあるようでした。
けれど数日見学しているうちに気づいたことがありました。
医療は社会的な背景によって必要とされることが異なります。パキスタンと日本では確かに現在おかれている問題は異なります。けれど自分が授けられたタレントを生かして人に役に立ちたい、という精神性は異なった環境においても共通するということです。
今回みせていただいたことは日本の多くの方にも伝えていくことが私のミッションだと思っています。
今後なるべく多くの方への報告会を企画しております。
私の診療所にもMCLAコーナーを作ろうと思っています。
最後になりましたが、パキスタンの姉妹たちの愛に満ちたもてなしには心から感謝しています。それぞれの姉妹がおかれた場所で懸命に日々自分を捧げている様子には感動しました。まるで自宅にいるのと同じように快適に過ごせるように責任もって私を守ってくれたSrガザラ、楽しい買い物に連れて行ってくれたSrヘレン、健康問題がありながら私のために祈ってくれた姉妹たち、ドレスを貸してくださったこともとても嬉しかった。そしてこのような機会を与えてくださった管区長三輪さん、ご一緒くださった垣内さん本当にありがとうございました。
私も皆様のために祈っています。そしていつの日か再びパキスタンを訪問できることを夢見ています。
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