卵一個の親孝行
3週間ほど前のことだったと思います。友人が近いうちにベトナムへ行くことを知った一人の若いベトナム人女性が、私のところに連絡してきました。
「そのお友だちに、お願いしてもいいですか?お母さんと妹に薬を届けたいのです。」
薬と聞いて、断る理由もないと思ったので、他人のことではありましたが引き受けました。そして、つい2,3日前「全部準備ができたので届けたいです」と言って私のところへやってきました。私が想像していたよりもたくさんの薬で、ちょっとびっくりしましたが…そして、「このような薬ならベトナムにもあるでしょう?」ときいたところ、「日本の薬がよいのです」という返事。
薬局へ行くたびに、支払額が多い(薬は高い!)のを知っていた私は、つい「こんなに買って、高かったでしょう?」と余計なことを聞いてしまいました。彼女はわるびれたようすもなく、「はい。今、私はお金が無くなりました。毎日卵を食べています」という返事。
私は「え?」と考えて意味が分かりませんでした、「毎日卵を食べている」ということが。
彼女が説明してくれました。
「私は、今お金が無くなりました。だから、毎日卵を食べています。卵は1パック100円とちょっとです。1個は大体10円ですから安いです。」
病弱の母親と病気の妹のために薬を買ってあげたい一心で、毎日10円とちょっとの食事でお金を貯めていたことを知った私は、言葉を失いました。
「母はいつも痛いです」と言って張り薬を見せてくれ、「とても痛いときはこの薬を飲みます」と言って錠剤入りの瓶を見せてくれました。ガラスの瓶は重いし、旅行中に壊れるかもしれないからとチャック付きのビニールの袋に入れ替えました。
このようにして、家族に愛のしるしであるくすりを届けられることが、彼女にとってどんなに嬉しいことなのか、袋に詰め替える動作をみたり、手伝ったりしているときその喜びと感謝が私にも十分伝わってきました。
毎日、卵1個の親孝行娘のことば:
「私は幸せ者です。神様に愛されていますね。」
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